秋田花まるっグリーン・ツーリズム推進協議会ブログ

大館 曲げわっぱと祥二くんの夏



カンナくずで丸く電球を覆い隠し、細く切った秋田杉の端材とアクリル板で
さらに周囲を囲っている円形のランプシェード。作品名は「O(オー)」。
そして「O(オー)」を空に見て下に立つのが「DATE(デイト)」。
「O」+「DATE」=「ODATE 大館」。
秋田の伝統工芸品「大館曲げわっぱ」が、1人の大学生の手によって見事に進化した。
■休学、旅、そして理由


名古屋市立大学芸術工学部でテキスタイルを学ぶ藤井祥二さん(22)
今年5月、3年次終了と同時に大学を1年休学して秋田にやってきた。
木工は経験がなかったという彼が、
なぜ秋田の地を訪れ“大館曲げわっぱ”に出会ったのか。


「大学の授業で地元の
伝統産業に関わりながら
産地の現状を知ったら、
これはこのままでは
いけないんじゃないかって。
それで、実際に土地に
足を運んで自分の目で
確かめてみたいって思って。」
一年をかけて
秋田 大館曲げわっぱ、
岩手 南部鉄器、
石川 輪島塗りなど
10か所を見てまわる予定ではじまったこの旅。
その最初の地を秋田県大館市に決めて、青森経由で大館に着いたのが今年5月。
「電車がどこまで行っても“街”に出会わなくて、そのまま大館についた(笑)」そうだ。
「例えば、なにかひとつプロジェクトで作品を作っても、
それは一過性で終わってしまうでしょ。大事なのは産地でどう育てていくかということ。
結局職人さんと地元の人が産地を支えていかなければならないんだと思うんです。
そこで僕は“デザイン”で何ができるのかって。自分なりの課題を探そうって。」
■課題 職人と市民を繋げる


最初に足を運んだのが、
昨年9月にオープンした
大館市大町にある
大館曲げわっぱ体験工房。
「大館曲げわっぱを初めて
見た時は、その製品の
完成度はとても高いのに、
地元の人の関心がとても
低いなって。
そこでぼくができるのは
新しい製品を開発すること
じゃなくて、地域の人に
いかに親しんでもらうか
っていう仕組み作りだと。」
作品作りを通じて工房と
市民との交流を生み出す。
藤井さんはそれを自らの
「課題」にすることに決めた。
↑「DATE」―人と自然の営みが日々蓄積するイメージ―
工房を訪れてから、作業工程で出る秋田杉の端材を作品に使うことは決めていた。
あとはどんな形にするか、できるのか。
■体験工房と佐々木さんとの出会い


「同年代の友達はできなかったけど、70代のお知り合いはたくさんできた(笑)」
という藤井さんの最も大切な出会いのひとつが、佐々木さんとの出会いだ。
佐々木悌治さん(79)写真左から2人目
体験工房の責任者であり、大館曲げわっぱの伝統工芸士である。


藤井さんは佐々木さんのことを
心底尊敬している。
「話していれば
まったく普通のおじいさん
なんだけど、
いつも新しいことを
考えている人で、
本当にモノづくりが好きな人。
製品作りのために
鋸の歯や機械を自分で
作ったりしちゃうんですよ。
道具を自由自在に操ってる。
そういうの自分では
絶対にできないと思うんです。
人間のたくましさを感じます。
自分も人として、
ああいうおじいさんに
なりたいなって。」
■作品「O」「DATE」に込めた想い
作品「O(オー)」は現在から未来へとエネルギーが昇華するイメージ。
カンナくずで作った球体は大館の根幹、伝統や歴史、現在を含めた街の中心。
そしてそれを囲む材木のひとつひとつが大館の人。
大館の街を中心に人が外ではなく内を向いている。
球を囲む秋田杉の端材には
佐々木さんらお世話になった体験工房の人たちの名前が書いてある。


「作品を運び出す時に思いついて書いてもらったんです。
僕は大館曲げわっぱの未来を考えた時に
あの工房はとても重要な意味を持つ場所だと思っていて。
これからも頑張って欲しいという僕なりのメッセージというか(笑)」


体験工房の責任者
佐々木悌治さんは
祥二くんを
“不思議な人”だという。
「敵を作らないでしょ。
誰からも受け入れられる
親近感がある。
職人というのは
固定観念があって
外れたことができない人が
多いんだけど、
藤井さんは白紙の状態から
自由に発想して
自分の思うように作る。
うらやましいですよ。
立派な人になると思います。」
そう言って目を細めた。
■この地で受け取ったもの


「自分では80点くらい。いいすぎかな(笑)
自分のしたことももしかしたら一過性のことになるかもしれないし、
誰かに自分の想いを託したり、もっと気持ちを訴えられれば良かったかもしれない。
でも、佐々木さんも楽しそうにしてくれたし、
いろんな工房を回って優しい声をかけてもらって応援してもらえた。
また会いたいねって話もしているし、
ぼくも楽しかったけど、誰かを楽しませることができたのかなって。」


「将来は、こういう
伝統産業を産地で育てる
仕組み作りの仕事をしたい。
そして、物をみるんじゃなくて
人をみていきたいと思います。
その職人が生きがいをもって
生きているのかってこと。
そういうのは
物に現れてくると思うし、
楽しんで作ったものを
地元の人が楽しんで見る。
その視点を持っていれば
産地はもっと良くなるし、新しい時代に繋がっていくと思います。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
祥二くんは「O(オー)」は元気玉なんだと教えてくれた。
この源は大館市民のそれに他ならないし、
市民がさらに曲げわっぱを理解して育てていけばこの球はもっと大きくなる。
それを進化していく街と人の歴史が下で支えている。
ほんの4カ月の交流だった。
しかし、たった一人の大学生がこの地に残した元気はきっと計り知れない。
                                      県北担当 やっつ
※藤井祥二くんの作品は、大館市の大館市観光物産プラザに展示されています。
■大館曲げわっぱ体験工房
住所:大館市大町70 
会館時間:午前9時?午後5時
休館日:毎週 火、水、祝日
体験料:丸弁当箱 3000円、7寸盆 2500円、パン皿 2000円
     ※いずれも1時間~2時間ほどで、作品は持ち帰ることができます。
問い合わせ・申し込み:電話0186-42-7502
HP:大館曲げわっぱ協同組合
■藤井祥二くんのブログ shojiの伝統産業を巡る旅 

2010年9月23日00:00 | 県北情報 | Trackbacks (0)

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