▲秘境・九階の滝
 粒様沢上流様ノ沢源流は、屹立する一枚岩の壁が連続し、マタギでさえも「神様の沢」として畏怖し、昔から近寄れなかったと伝えられる秘境であった。獣道しかない険しい山容で、これまで「九階の滝」まで到達した人は、地元でさえ数えるほどしかいない秘境の滝であった。この滝は、九段からなり全体の落差は135mもある。下段の滝は60mほど。
▲ノロ川遊歩道~赤水沢~様ノ沢九階の滝MAP(カシミール3Dで作成)

▽様ノ沢源流・九階の滝コース
クマゲラ保護センター-ノロ川遊歩道(2.1km)-桃洞渓谷・赤水渓谷分岐-(1.2km)ヤスミバの沢-水場
-(0.7km)-右岸小沢尾根-(0.4km)-分水尾根・745mコル-右手の尾根・九階の滝ビューポイント

▲スタート地点:クマゲラ保護センター ▲分岐点・・・右に進めば、割沢森・森吉山方面へ。直進すれば桃洞渓谷・赤水渓谷へ。
▲ノロ川遊歩道のブナ林をゆく
ノロ川沿いの遊歩道は、苔生すブナの原生林が延々と続き、誰もが気軽に森林浴を楽しむことができる
森林浴コースとしては、通称「クマゲラの森」と呼ばれるとおり特Aランク
クマ避け鈴を全員腰に下げた7名のパーティ・・・全員が並んで歩けば、ジャラン、カラン、ジャラン・・・
笹薮で寝ていたクマが「うるさい~!」と言いながら起きてきそうなほど凄まじい音が鳴り響く
▲桃洞渓谷・赤水渓谷分岐点
クマゲラ保護センターから約2km、野生鳥獣センター(環境省)から約3km
右の桃洞渓谷を1.4kmほど上れば桃洞滝、左の赤水渓谷を1.9kmほど進めば九階の滝コースの小沢に達する
▲赤水渓谷左岸沿いのブナ林
遊歩道からトロ場を覗けば、岩魚が悠然と泳ぐ姿を見ることができる
▲色付き始めた赤水渓谷
かつては、左の写真手前が入渓地点だったが、淵が深く危険なため
現在は、大きな淵の上流に出る地点に変更されていた
右の写真のとおり、トラロープを頼りにナメ床に下りる
▲甌穴ノ滝(右)
真っ赤に色付き始めたハウチワカエデの紅、一枚岩盤に生えた潅木類の黄色が鮮やかだ
ナメの滝壺は意外に深く、岩魚が悠然と泳ぐ姿を垣間見ることができる
▲天国の散歩道「赤水渓谷」
渓谷のナメ床は、兎滝まで約3.5kmも続く
天然の歩道は、実に快適で、長大なスラブ壁を彩る紅葉も絶品・・・
赤水渓谷に分け入ると、誰もが感嘆の声を発する・・・まさに「天国の散歩道」
▲第一の水場 ▲ナメの小滝と甌穴が続く美渓をゆく
▲第二の水場
ヤスミバノ沢を過ぎると、ほどなく第二の水場に達する
乾いた喉を潤し、紅葉に染まるナメ滝をゆく・・・爽快感は最高潮に達する
▲スラブとナメの渓が大きく右にカーブする地点・・・桃洞沢分岐点から約1.9km
その左手潅木に赤いスプレーがあるのを確認
その目印は、九階の滝を眺めるコースの起点になっている
▲尾根筋コースを辿る
様ノ沢との分水嶺に至る小沢はナメ滝となっているが、左岸の尾根筋にはっきりとした踏み跡がある
右の写真は、その尾根筋から赤水渓谷を見下ろすように撮影・・・
右手の屹立するスラブ壁は、ほとんど潅木類も生えないほど傾斜がきついのが分かる
尾根筋ルートから滝上に出ると、また滑りやすいナメの小滝が現れるが
トラロープがあるので快適に進む
ブナが林立する二又で休憩・・・左の沢方向に赤いテープが下がっていた
▲窪地状の小沢を詰め、コルへ
左の小沢を詰め、笹薮をかき分けるように登ると、745mの分水尾根に達する
不思議なことに、右にも左にも明瞭な踏み跡と赤い目印があるので注意

地図を見れば、左のコースが九階の滝に近いように見えるが、これは旧ルートの踏み跡である
進路を右にとると、ほどなく九階の滝のビューポイントに辿り着く
▲ビューポイントから九階の滝を望む
確かに九段からなる滝であることが分かる
ただし、この地点からだと直線距離にして700mと遠いので、ズーム倍率の高いデジカメが必須である
▲様ノ沢源流に懸かる幻の滝・九階の滝
太平湖に注ぐ粒様沢は、上流で粒沢と様ノ沢に分かれる
特に様ノ沢は、巨大な一枚岩が連なるスラブ群が深い谷底から一気に迫り上がる秘境の渓谷
クマやカモシカが近付いても谷底に落とされるのは必須・・・だからこの一帯には獣も近付かない

かつて阿仁マタギは、この一帯を猟場にしていたが、それは粒沢であって
様ノ沢は猟場から外れていた・・・マタギは、クマも寄り付かない険谷を「神様の沢」として畏怖していたという
だからこそ「(山神)様ノ沢」と命名されたに違いない
▲目の前全てが、蟻地獄のように連なる幽谷の滝・・・
その一枚岩盤を滑り落ちる弱水が、激甚の落差を滑るに従って速度を倍化させ
まるで岩を削る斧に変身したかのように削り落ちていく

奥森吉最大の滝・九階の滝という稀有の景観を造り出したものは・・・水の力
まさに山の神、水の神の造形美・・・神々が宿る滝を目の前に声を失う
▲「もののけの世界」に誘う幻の滝全景
「谷を歩いて何時も驚嘆するのは水の力だ。
あんな高い山から、こんな水底まで、こんなに剛頑な岩をどうして掘り下げて来たのかと、
隆々とした肩骨を突き出している狭壁を仰いで、私は自然の彫塑の痕に眼をみはる。

柔軟な水が・・・巨大な岩石を押し流し、遂には絶大な天斧となって堅岩を割り、深谷を刻む
その雄大な彫塑の痕を見て歩く、私たち谷をゆく者は、高大な自然の成せる画廊に、
幾百世紀を丹念に刻んだ超人の傑作を鑑賞しながら行くのだから、その楽しみはユニークである」
(「渓(たに)」冠松次郎著、中公文庫)
参 考 文 献
「ぐるっと 森吉山」(宮野さだひさ著、秋田魁新報社)
「渓(たに)」冠松次郎(かんむり まつじろう)著、中公文庫

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