Country of the beauty/Akita's nature and climate
 古来より、農民たちは山を神とみなしてきた。
 田植えが近づくと、「山の神」が里に降りて「田の神」になり、秋の収穫が終わると、また山に帰って「山の神」になると信じられてきた。10月15日が「田の神」が「山の神」になる日と言われ、餅を供え山へ送った。
 こうした自然に対する信仰心は、自然が、厳しい北国の気候風土に生きる人々に、多くの恵みをもたらしてきたからである。だが、残念ながら、全国的にみても恵み豊かな原生林と呼べる森は、ごく限られた地域にしか残っていないと言われて久しい。

 ここでは、ブナ帯に位置する雪国秋田の自然と風土を中心に紹介、美人や美酒、美味しいお米を育てた名水が流れ、そうしたものを守り続けてきた人たちが暮らす秋田の魅力を再発見、再評価していただければ幸いである。

美しき水と緑の風景Part1 Part2
 ブナ帯の四季、ふるさとの四季、行事食、多用な生き物たち、清冽な渓流と滝、木の実・・・
雪国の山野草図鑑
 早春から秋まで、雪国を代表する山野草、夏山のお花畑、気軽に観賞できる花の湿原・・・
縄文の森・白神山地
 世界最大級のブナ原生林が広がる世界自然遺産・白神山地
巨樹の森・和賀山塊
 県内一の原生林地帯、日本一のブナが次々と発見された原始の森・和賀山塊。
八幡平・玉川源流
 山の湯煙が原生林にたなびく八幡平・源流部の自然

写真集「鳥海山紀行」
 日本百名山・鳥海山(2,236m)の四季を活写した淡路利行さんの作品
写真集「秋田駒ケ岳 花紀行」
 花の名山として名高い秋田駒ケ岳の四季を撮影した山田隆雄さんの作品
あきた滝300
 清冽な水と緑したたる深山幽谷の滝を記録した佐藤俊正さんの「フォトガイド名瀑紀行」。
水の郷・森吉山
 「水の郷100選」に選ばれた森吉町とマタギの里・阿仁町にまたがる森吉山(1,454m)を余すところ無く記録した宮野貞壽さんの作品「ぐるっと森吉山、改訂版」

自然と人間・美の極致 カタクリ群生の郷
 仙北市西木村八津・鎌足のカタクリ群落、カタクリの語源、クリの歴史と巨大なカタクリ群落の秘密を探る
刺巻湿原・ミズバショウ群生地
 仙北市田沢湖町刺巻湿原、雪国に春を告げるミズバショウ、サゼンソウの群生地
夏の八幡平・大場谷地 花の湿原探訪
 気軽に高山植物を鑑賞できる湿原、ニッコウキスゲ、レンゲツツジ、ワタスゲ、コバイケイソウ・・・
秋田県自然環境保全地域 刈女木湿原
 羽後町刈女木湿原の固有種・ガリメギイヌノヒゲほか、気軽に鑑賞できる草花を紹介


 「豊かな自然」という言葉は、農林水産物をアピールする場合、どこの市町村、どこの県でも使っているが、問題は「自然の質」である。

 例えば、白神山地や森吉山でクマゲラの生息が確認されているが、それがどういう意味を持つのかを考えず、ただ天然記念物が見つかったぐらいにしか思わないのが通例である。

 しかし、クマゲラは、1つのツガイが生息するためにブナの原生林が1,000haも必要な特殊な鳥であり、クマゲラが生息しているということは、それだけまとまった質の高い原生林が残っている証左なのである。

 クマゲラは、自然度が高い秋田といえども、ごく一部でしか確認されていない。
 一般的に自然度を図る尺度として、天然の渓流魚や山菜・きのこはどうだろうか。
 秋田の山と渓谷は、今でも山の幸の宝庫であり、質・量ともに日本一ではないかと思う。
 これもまた、豊かな自然の証のひとつであると言えるだろう。

 秋田の山は、標高が1,000m前後と低く
 高さでは日本アルプスなどには到底かなわない。
 さらに、山の頂上までブナや笹藪に覆われ見晴らしも悪い山が多い。
 縦走などを試みれば、笹海の中に彷徨するような場所はいくつもある。

 だが、ひとたび、山の懐、すなわち渓谷へ向かえば、
 ブナを主体とした森に覆われ、清冽な水が溢れんばかりに流れている。
 秋田の自然は、母なる森と水が群を抜いて秀逸していることに気づくだろう。
 その自然は、まさに秋田の農業農村を支えてきた命の森である。
 わたしたちは、この森を「母なる森」と呼んでいる。