ユミおばあちゃんのチューリップ畑

2010.05.17

「わたしね、毎朝畑に来て、おはようございますってお花に言うんです。
雨が降ってれば、雨ですけど頑張ってくださいねって。
きょうはね、いいお天気ですねって言いました。」
気持ちのいい青空の下、およそ20アールの畑一面に咲き誇るチューリップ。
通りすがる人々は車を停め、その美しさかわいらしさに目も心も奪われて、
この心優しいささやかな贈り物を心豊かに享受する。
 
贈り物の主は工藤ユミさん(85)。
小柄な身体で一本一本丁寧に育てあげ、毎年多くの人に幸せのおすそ分けをしています。
 
 
にんにく畑をチューリップ畑に

鹿角市十和田大湯。
ユミおばあちゃんが、もともとニンニク畑だった場所にチューリップを植え始めたのは、
今から10年ほど前のことです。
畑の片隅から少しずつ植えたチューリップは、次第にその数を増やし、

今では種類の数も植えた本数も、数え切れないほどになりました。
鹿角市花輪で生まれ育って、19歳で大湯に嫁いできたユミおばあちゃん。
ずっとおじいちゃんと一緒に、ニンニク農家として家族を支えてきました。
しかし、価格の下落と高齢化、息子は教師の道を歩み跡継ぎはなく、
10年前、ニンニク栽培を続けることを諦めました。
その長年連れ添ったおじいちゃんも、5年ほどまえに他界。
今は家族に支えられながら、大好きなチューリップを植え続けています。
「チューリップのいいところはね、種類とかに関係なく一斉に咲くところです。
まるでね、さぁみなさん咲きますよ、って言ってるみたいなんです。」

 
 
訪れる人の存在

地元新聞に紹介されたり、口コミで広がったり。
毎年ユミおばあちゃんのチューリップをたくさんの人が見にやって来ます。
何年も通って来る人や、一日に何度も足を運んで来る人もいるそうです。

「その人はね、この畑を見たことがないっていう人に会う度に連れて来るものだから、
1日に2回も3回も来るんですよ。おかしいでしょ(笑)。
でもね、嬉しいです。せっかく植えても見てくれる人もいなければ寂しいですよ。

あと何年続けられるか分からないけど、できるうちはね。」

 
 
自分のためのチューリップ畑

「この畑はね、自分のためです。この畑を見ていると、昔の辛かったことや

今の心配事なんか全部無くなってしまいます。だから今は本当に幸せです。」

農家のお嫁さんとして、そして母親として一生懸命生きてきたユミおばあちゃん。
おじいちゃんとはお見合い結婚で、嫁ぐまでは顔も見たことがなかったそうです。

「そういうことはよくあったんです」とユミおばあちゃんは言います。
戦争を経験し、農家としても事業を大きくしながら子どもを育て、
そうして育てた一人息子を、当時では珍しい東京の大学に送り出しました。

「この畑を見るとみなさん大変でしょうって言うけど、大変だなんて思ったことはないです。

戦争や昔のことを思えば、どんなことも苦労なんかじゃないの。」

 
 
今が幸せ
ユミおばあちゃんの一番好きなチューリップは、紫色のお花です。
赤やピンクのお花が多い中で、紫色は少数派。
でもそこがいいの、とユミおばあちゃんは目を細めます。
 
 

畑の奥で、小さな黄色い野菜箱に腰をかけ、チューリップを見にやって来る人を出迎えて、

時には一緒に語らいながら、大好きな春の時間を過ごすユミおばあちゃん。
ユミおばあちゃんの隣に腰をおろすと、
その目線はチューリップの背丈と同じ位になって、

そのカラフルな彩りの中に、優しく包まれているかのような気持ちになってきます。

「冬の吹雪の時でも、あぁ今はこんな景色だけど、

春になったらここはお花でいっぱいになるんだなぁって思ってね、嬉しくなるんです。

気持ちが穏やかになって、春が楽しみになります。だから今がほんっとうに幸せです。」
穏やかでありながら、凛と意思強い声で「幸せ」と語るユミおばあちゃんは、
春の日差しを浴びて気持ちよさそうに風に揺れるチューリップたちを、
そのまっすぐな瞳で優しく見つめていました。

 
 
 
 
 

「ねぇおばあちゃん、毎朝お花に話かけると、お花はなんて答えるの?」

「うふふ、ありがとうございますって言いますよ。」                                   

県北担当 やっつ

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