横手市大森町・塚須沢集落

棚田オーナーツアー第3弾・秋感ツアー

● 塚須沢にて「天水米」の刈り取り(手刈り)

 「棚田」は、山間部のため機械での作業が不便な場所ですが、生活排水は一滴も入らず、清らかな沢水で草木が育つ良い環境とされています。

 手植え、手刈り、はさ架けなど、伝承の作り方を守り、体験を通して伝えている農家さんが、秋田県にはまだまだ残っています。

 横手市大森町の八沢木集落もその一つで、12戸ある民家集落を抜け、緑の葉の色が濃く生い茂る林の近くにその棚田はあります。

 大森町グリーン・ツーリズム推進協議会が主催する「棚田オーナーツアー第3弾」が、9月25日(土)開催されましたので、そのもようをレポートします。

 「棚田オーナーツアー第3弾」は、第1弾「春感ツアー」・第2弾「夏感ツアー」に続き「春感ツアー」で田植えをした棚田で稲刈り体験となりました。

 

 自然乾燥・天日干しのお米は、どんなにか美味しいことでしょう。全部架けると米二俵分(250束を4段、およそ二間分)、昔は夫婦二人が一年間食べていける量(120kg)でした。

 

 このはさ架けをすることで、収量および(昔の検地における)年貢米が一目で判るようにしたといいます。「収量隠そうったって、そうはいかない。ここにあるのが全てだから」。

 

 はさ架けの様子。(※この日は湿気の為、はさ架けは中止となりました。)丁寧に“まっか”(横に渡した枝)に架けていきます。

 さぁ、おじちゃんと一緒にはさ架け体験だ!

 「うしまっか(足場の台)から、落ぢねよに気つげれな」 

 

 塚須沢集落常会長の佐藤昇悟さんが、手刈りの見本を見せてくださいました。

 「見本だけで、覚えられるかなぁ~。」

 

 普段は閑静な田んぼも、今日ばかりはあちこちから収穫を喜ぶ(?)笑い声が聞こえてきました。でも、手先は休んでいませんよ。

 

 塚須沢集落の熟練農家さんから、刈り取った稲の束ね方を聞いています。

 その表情は、大人よりも真剣。

 

 7~8束ずつ刈り取り一束にまとめ、「そくだて(地元で“うまっこ”と言っていました)」にし、三日ほど置いてからはさ架けをします。

 

 稲刈りに参加した小学生の風子ちゃんは「楽しい。ここに住みたい」と笑顔で作業をしていました。将来の夢は、町医者なんだって。

 

 束にして、「そくだて」までの手ほどきを受ける、平鹿地域振興局の永井さん。大変お世話になりました。

 

 「おもくないよ。だいじょうぶだよ」一度崩れた“うまっこ”を、一生懸命たて直す多門くん。「大森町の棚田ブログ」の作者である

平元さんも応援。

 長い歴史の中で私たちの「食」を支え続けてくれている農家さん。作業形態が手刈りからコンバインへ移行しても、手で刈り取っていた時代を忘れてはいません。時代を経ても、その想いが引き継がれていきますように。

 

 作業半ばで終了時間になってしまい、このまま翌日に持ち越しとなりました。

 

 刈り取るべき稲はまだまだあれど、いったん昼食、午後から作業を再開。

●塚須沢のぶどう狩り体験

 菊地敏雄さんのぶどう畑は、平成元年から13年までナイアガラやキャンベルなどを扱っていた前任者より受け継ぎ、今年で八年目です。

 「(前任者は)大森にいる人だけれど、もうダメにしようと(畳もうと)していた畑を、退職した私が継いだのよ」。

 そんな菊地さんが畑を受け継いで二年目の冬、大雪で畑が全滅。けれど前任者が残した唯一の23年木が生きていたおかげで、それをもとに何とか立て直せたそう。

 「こう考えると不思議だな。俺が継がないとこの畑はダメになってたけし、けんど彼が残した木がねば大雪で倒壊したままだった。この畑を復活させたのは誰って、二人よ。会ってねしても、ひとつのことで人ってやっぱりどこかで助け合ったり何だりして、つながってるんだべな…」。

 時代が変わっても、このぶどう畑が生き続けてこれたのは、そうした人から人への“想い”の継承があったからかもしれません。

 

 今回は、その想いを受け継いだ、甘くジューシーなスチューベンの収穫体験・試食・直売となりました。

 今年も無事に実ったぶどうを、感慨深そうに見つめる農園長の菊地敏雄さん(左)。

 荷物になるため、ここでは予約だけして帰りに受け取ることになりました。

 

 完熟した状態で収穫しているのでずっしりと重く、大ぶりな実と実の間が詰まっていても甘い!そして色艶と張り、香りが違います。

 

 水分を十分含んだぶどうで、喉を潤わせる参加者たち。「うお!うめぇ!」「おいしい!もぅひと房食べてもいいですか?」

●大森町の方々との交流(昼食)

 お待ちかねの昼食。大森町グリーン・ツーリズム推進協議会の後藤洋子会長を

はじめとした、地元のお母さん達による手料理が振る舞われました。

 

 後藤洋子会長が、ひとりひとりに声をかけて配っていきます。「おかわりいっぺあるがら、たんと喰ってけれな~」で、迷わずおかわり!

 

 これだけの人数の量を、どんなにか早起きして作ったのだろうと尋ねると「農家の嫁っこ(にとって)は大したごどねな」との答えが。

 

 里芋と鶏肉の炊き込みごはん、芋煮(里芋の入った豚汁)、切干大根の煮物、枝豆にがっこ、りんごにぶどう…普段何気なく食べているいつものメニューが本当に美味しくて、午後もひと頑張りできそう。

 

 皆の顔が見えるよう車座になりたかったけれど、人数とお料理の数の関係で、適当に座ることになりました。でも、その方がゆったりできて良かったかな。初対面の大人たちから、色んなお話を聞くことができたしね。

 

 豚汁は味噌味でしたが、こちらはお醤油味の鶏汁(いものこ入り)。

 

 大森の肥沃な大地で収穫された野菜や果物、漬物などの加工品も直売。

●平鹿りんごのもぎ取り体験

 平鹿地域は、全国でも有数のりんごの産地。

 今回は大森町グリーン・ツーリズム推進協議会の会員、加藤美和子さんの果樹園で、「千秋」の収穫体験が行われました。

 

 「ふふっ、ちょーぅせーん!」

 

 さっそく「ぱくり!」お味はいかが?

 

 「千秋」はあまり日持ちがしないけれど、そのぶんもぎたてが美味しい!

 

 今回のツアーでの、よどぎみの収穫物。手前は大森のお母さんおススメのプルーン。

●塚須沢集落散策♪

 「今回のツアーは、ただの収穫体験ツアーじゃない。それだったら、周辺を散策してみよう」…そんな想いから集落内をぷらぷら歩き、撮られた写真たち。

 “塚須沢”は、朝夕の温度差や土の滋味をつける雪深い冬など、美味しい米作りの条件が揃っていますが、「手をかけてやると、田んぼの力が上がる」。みんなの努力で収穫を迎えたのだから、きっと美味しい筈です。

 今回刈ったのは、7アールの田んぼ。昔はこの広さに近い10アール(一反歩)の田んぼを、夫婦二人が1日で刈ってしまったものらしいのですが、30人で1日費やしても半分も刈り取ることができませんでした。事実を知って、「私たちがしている“農作業体験”は、農家さんのお手伝いどころか、足手纏いになっていた…?」と苦笑する参加者も。けれど帰り際、満面の笑みで「また来てげれな~」と見送って下さる集落の方々のお姿に“迷惑”なんて感情は見当たらず、自然と「また来よう」と、温かい気持ちになったのでした。そんなふれあいも、グリーン・ツーリズム体験での心の収穫です。

 

 こちらも是非ごらんください!

 ●横手市大森 県内初・棚田オーナー制スタート(ブログ・やっつ編)

 ●棚田オーナーツアー「夏感ツアー」(HP・けこさん編)

 

★おまけ★① お疲れ様でした!

★おまけ★② 「はっッ・・・!」

県央地区担当よどぎみ、出張しました。