なつ!ブナと水と蛍の里で棚田ツアー

~世界遺産「白神山地」で夏休み体験~

白神山地のブナ林

 2011年7月30・31日、秋田県が制定した「棚田オーナー制度」のモデル地区に選ばれた藤里町横倉地区で、春に引き続き夏を楽しむ企画「ブナと水と蛍の里で棚田ツアー」が行われた。

 初日は、春のツアーで植えた稲の生育状況観察や草刈り、夕方はナイトハイクとして蛍の観察会が行われた。

 翌日は、市川善吉さん(自然観察指導員・世界遺産白神山地ガイド)に再会、当協議会会員であり白神の自然体験活動を通してグリーン・ツーリズム活動に取り組む、「白神ぶなっこ教室」の佐尾さんも同行し、白神山地の麓・岳岱自然観察教育林・太良峡まで案内していただくという、大変貴重な経験をさせていただいた

◆1日目…横倉の棚田で農作業

 春に田植え体験をした参加者が、再び横倉の棚田に集結。草取りや、稲の生育状況観察を行った。

 今回は、棚田ツアーの参加者のほか、白神ぶなっこ教室主催の「夏の学校」に7月28日から参加していた川崎からの小学生と合流、周辺の散策や生き物観察などで自然に触れ合いながら交流を深め合った。

藤琴川で渓流釣りをする人。

 夏のツアーにふさわしく、晴天に恵まれた。写真は、ぶなっこ教室前の藤琴川で渓流釣りをする人。

ぶなっこ教室前の犬

 ぶなっこ教室前では、佐尾さんが東京から連れてきた犬が、子どもたちの人気をさらっていた。

ぶなっこ教室にてオリエンテーション

ぶなっこ教室にてオリエンテーション。

地主の市川博之さんと挨拶

地主の市川博之さんと挨拶。

横倉の棚田-夏

稲の生育は上々。この冷涼な気候が、しっかりとした味わいの米を育んでくれる。

草刈りの光景

草刈りの光景

稲の成長を妨げる恐れのある草を、採り残しのないよう中まで入って、端から丁寧に抜いていく。

市川さんにお話を聞く子どもたち

市川博之さんの、お話を聞く。

市川善吉さんに、やり方を聞く

市川善吉さんに、やり方を聞く。

市川博之さんの息子さん

 写真右にいるのは、秋の収穫時期まで父親である市川博之さんを手伝っている息子さん。

刈り取った草は、土に埋めて肥やしにする

 刈った草は土に埋めて肥やしにする。形が稲と非常に似ているため、間違って抜かないか心配。

黙々と作業を進める知樹くん

黙々と作業を進める知樹くん。

虫を捕まえた子ども

虫を捕まえた晃太郎くん。

ぶ な っ こ 教 室 で の そ う め ん 流 し

ぶなっこ教室でのそうめん流し

昼食会場となったぶなっこ教室では、流しそうめんを楽しんだ。

ぶなっこ教室でのそうめん流し

 流れてきたそうめんの受けザルを、交換する子どもたち。ここに来ると皆、働き者になるんだとか。

素麺とともに並んだ、採れたての新鮮野菜

 新鮮な地元野菜やおかずも。「こんな大きなキュウリ、見たことない!」とはしゃぐ子どもたち。

藤里産のトマト

トマトにいたっては、果物のように甘い。

スイカの差し入れ

夏の定番・スイカの差し入れも。

藤 琴 川 で の 川 遊 び 体 験

藤琴川での川遊び

藤里の中心を流れる藤琴川で、子どもたちは川遊び。天然のマハゼやメダカ、オタマジャクシなども観察。

地域ガイド・鎌田さんと子どもたち

 地域ガイド・鎌田さんに、イタドリ(若芽は食用に用いられる)の茎笛の作り方を聞く子どもたち。

イタドリの草笛

 完成。大人も童心に帰って。「そこらじゅうにある植物が、遊びものだね」

川遊びをする子どもたち

川遊びをする子どもたち。

願いを込めて

願いを込めて、笹舟を流す。

周 辺 の 見 ど こ ろ ・ 滝

峨瓏の滝

 子どもたちが川遊びをしている間、道路を挟んですぐ向かい側にある「峨瓏の滝」へ。「峨瓏」とは、「山が険しくそびえ立っていて、その流れは急流であることを意味している。今は亡き先人たちは、奥山に入り絶壁の景観のすばらしい所を「○○峨瓏」と呼んでいたという(「峨瓏の滝」案内看板より)。

 高さ12メートル、滝の上部にある「峨瓏峡」から水が流れ落ちることからこの名が付いた。

滝の沢神社

 左横に鎮座している「滝の沢神社」は、安永10年(1780年)に建立された。「峨瓏の滝」に深い関わりがあるとされ、祭神は不動明王・火産霊神。

菅江真澄の碑

 享和2年(1802年)、この地を訪れた紀行家・菅江真澄は、「零る雪か 花かあらぬか やま風に さそわれてちる 滝のしら泡」と詠んでいる。

銚子の滝

 こちらも菅江真澄が訪れた、高さ18メートルの「銚子の滝」。滝壺全体に丸みがあり、徳利に似ていることからこの名が付いた。また、先人たちは滝口が付き出ていることから、「堤子(ひさげ)の滝」とも呼んでいた(「銚子の滝」案内看板より)。

銚子の滝

 このあたりは「湯の沢」という地名のとおり、温泉が湧き出ている。この日、私が風呂を借りた「湯元・藤駒荘」の奥にひっそりとあった。

 温泉の歴史は古く、文久年間に村民が発見してから、太良鉱山があった昭和初期まで様々な宿が軒を連ねていたという。鉱山の衰退とともに解体されたが、数年後、現在の「藤駒荘」の土佐氏が復活させたそうだ。残念ながら「藤駒荘」の営業も年度内いっぱいの営業らしいが、人々が支えてきた地域の温泉の記憶はいつまでも残って欲しい。

 

 「藤かつら くり返し見る いわがねに かかるも高き 滝のしらいと」

 菅江真澄が呼んだ「藤かずら」。幹は朽ちても根からは細いつるが伸びている。

 

夕 食 は 親 子 で き り た ん ぽ 作 り 体 験

ぶなっこ教室にてきりたんぽ作り

ぶなっこ教室にて、親子できりたんぽ作り。

不揃いな手作りきりたんぽ

個性が出ている、不揃いなたんぽ。

きりたんぽ

皆で作ったきりたんぽは、格別な味。

地域の食材を使用した夕食

地域の食材を使用した夕食。

横 倉 ナ イ ト ハ イ ク

横倉の蛍

横倉の蛍

 夕食を終えた後、市川善吉さんの案内で横倉集落の棚田周辺をナイトハイク。

 辺りは満点の星空。時折流れる光が、流れ星なのか蛍なのかの判断がつかない(写真は蛍)。ロマンチックな気分に浸っていると、市川さんがポツリ。「今流れた光は、札幌へ向かう飛行機の最終便(の夜間航行灯)でないかな」

◆2日目…世界遺産となった白神山地・ブナ林を散策

キラキラと輝く藤琴川

今日も藤琴川は朝日を浴び、キラキラと輝く。

白神山地世界遺産センター見学

朝食後、白神山地世界遺産センターを見学。

ブナ林を案内する市川善吉さん

 「岳岱自然観察教育林」を散策。「岳岱」は、駒ケ岳の北東側の台地上の緩傾斜地にあるブナを主とする、標高620メートルの天然林。ブナの実生から稚幼樹・成木に至る生育過程が観察できる。

 ここでも、市川善吉さんの丁寧なガイドに恵まれた。

見比べてみよう、白神に生息する様々な木や植物。

 ヤチダモの木 イタヤカエデの木 サワグルミ キハダの木

 (写真左から)野球のバットに使用される、ヤチダモの木。 ピアノの鍵盤に使用される、イタヤカエデの木。下駄や経木に使用される、サワグルミの木。煎じて飲むと、胃腸を整えると言われるキハダの木。

昔、市川さんら営林署の人々は、仕事を終えて飲んだ翌朝、キハダの皮を剥いだものを飲んで気付薬としたようだ。

ブナに絡まるツルアジサイ

 樹齢420年以上のブナに絡まるツルアジサイ。

 皮が通常の木の約6倍あるといわれるブナは、こうして様々な植物や苔などを鎧に、幹を補強して生き延びてきた。

 まさに、植物同士の共存が育んできた命である。

ブナの2次林

 ブナの2次林。もともとブナなど落葉広葉樹の森に、柔らかい針葉樹の杉を定植したため、4.5メートルもの豪雪に潰されてしまった。市川さんらはその杉を伐採し、新たなブナを植林し、「ブナの森」を蘇らせようとしている。

 ホオの木 サルノコシカケ スイカズラ科のニワトコ。 ウバユリ

 (写真左から)ホオの木。サルノコシカケ。スイカズラ科のニワトコ。ウバユリ。

白神の散策道

 このような散策道は全て、市川さんらが整備。車いすを利用している方でも自然観察会が楽しめるよう、一部コースを設定。歩道や案内板・ベンチも整備され、初心者でもトレッキングが可能。「私の跡をついて来れば、怪我しないよ」と、山を知り尽くした市川さん。

生き延びたブナ

 第二次世界大戦で、特攻隊の飛行機のプロペラ用に使用されるところだったブナ。幹にはその当時の記号が掘られたままとなっている。他にも約1,000本ものブナが調査木として傷つけられた。しかしその後間もなく終戦を迎え、すんでのところで1本も切りだされることなく生き延びた。

岩には、様々な植物が根を張っている

 「この岩だけで、ツクバネソウ・ハリギリ・アクシバ・ハウチワカエデ・ツルアジサイ・キリンソウ・シオデ・ツルリンドウ・イワガラミ・ツタウルシ・ノリウツギなど10種類以上の植物が根を張っている」と説明する市川さん。ノリウツギは昔、その樹皮から液を採り、障子や団扇、番傘などの糊として使用された。昔は布で濾して油を搾ったことからその名が付いたという「コシアブラ」の説明もあった

ウワミズサクラ

 「この木はウワミズサクラと言って、さくらんぼが美味いんだ。鳥の糞からおがったものだよ」と、市川さん。「糞ついでに申し上げると、山水は一見綺麗だからと、そのまま飲んではいけない。熊や鹿などの尿も混じっているからね。必ず、山から染み出したばかりの水を口にするように」とのアドバイス。このあと、その清水が湧き出るスポットへ案内してくれた(下記参照)。

炉の跡

 山に入りここで寝泊まりをした熊獲り(マタギとは言わず)の炉の跡。獲った獲物は、山本まで持って行って解体をしたという。

白神の恵みである湧き水をいただく

 散策コースの終点となっていたのは、清らかな水が沁み出た場所。「昔はこうして、蕗の葉のコップで飲んだものだよ」。白神の恵みをいただく。

モリアオガエルの沼

モリアオガエルの沼。トウホクサンショウウオも。

駒ケ岳

標高1157.9メートルの駒ケ岳。

くるみ台での川遊び

 昼食後、子どもたちはくるみ台での川遊びを楽しんだ。

発芽して1年目のブナ

 発芽して1年目のブナ。来年は葉が3枚に増えていることを期待している。

白神産地散策メンバー

白神山地散策メンバー。

市川善吉さん(自然観察指導員および世界遺産白神山地ガイド)

市川善吉さん。

 「ここでは人間こそが、良くも悪くも自然体系に影響を及ぼす」――

 山を知らずに入ると恐ろしい目に遭うけれど、真に山を知った人はその素晴らしさに圧倒され、次また入らずにはいられないのだろう。山と共に何十年と生きてきた市川さんは、危ない目に遭ったことは一度もないそうだ。かすり傷ひとつ負ったことがないは驚異である。

 ブナは根を張る木。岩の上に根を張ったりして頑張っても、80パーセント以上の弱いブナが消えていく。ここに至るまでにかかった年数は、少なく見積もっても約200年。つまり、強いほんの20パーセントのブナだけが、脈々とこの白神の森を守ってきたということ(原生林で1ヘクタールあたり45~60本の換算)。5月が水を吸い上げる最盛期、葉が出揃うと吸い上げをやめる。そうしてブナは、そんな短い間に吸い上げた水を幹に集め、腐葉土に流し(樹幹流)、土壌を豊かにしてくれているのだ。

 夏真っ盛り、里は蒸し暑くてうだるようだったのに比べ、白神の林の中は非常に涼しかった。それもひとえにブナの保水力のおかげなのだ。

 そんな人間の営みと自然との関係性を再度考え直すことのできる自然散策となった。

現地特派員 よどぎみ

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