あき!黄金色の棚田で稲刈りツアー
~棚田オーナー企画 藤里町横倉地区~

ここは本当に空が広くて、生き物たちはいつも気持ちよく呼吸をしているように見えます。

この春みんなで植えたあきたこまちの苗が、太陽をたくさん浴びてふっくらと生長し、

収穫の季節をむかえました。標高210mの棚田に広がる黄金色の絨毯。
秋晴れの2011年10月8日(土)、23人の仲間たちと一緒についに稲刈りです!

   
稲刈り

市川博之さん(87)

稔りを迎えたあきたこまち

今回お世話になった棚田所有者の市川博之さんです。

現在は町内の別の場所に引っ越して自宅を構える市川さんですが、家族の協力を得ながら、

米作りのために、毎年春から秋の間この横倉に住み込んであきたこまちを育てています。

6月の田植え、7月の草刈りに続き、今回も稲刈りを指導してくれました。

   

稲が倒れてしまった春に苗を植えた田

ついに稲刈りスタート!

今年度最終回となる稲刈りには、秋田市の親子や首都圏からの団体など、

23人が参加しました。残念ながら、前日の大雨で、春に田植えをした田は稲が倒れたり、

ぬかるんでしまっていました。それでも、比較的足を踏み入れやすい場所から稲刈りを開始。

お尻を汚さないように気をつけながら、小さくかがみこんで刈りとっていきます。

 

指導をする市川善吉さん(右)

見よう見まねで挑戦!

手刈りした稲は天日干しにして乾燥させます。

「白神ぶなっこ教室」スタッフの市川善吉さん(左写真右)が束ね方を教えてくれました。
サクサクサクと3株刈り取ったら1束に。2
束を交わらせ、途中を稲わらで固定します。(右)
「簡単にできそうなんだけどな~(苦笑)」皆さん苦戦しながらも上手に束ねていきました。

   


杭の下に棒を仕掛ける市川博之さん

 

その杭にひと束ずつのせていきます

参加者たちが着々と稲を刈っているその間に、

棚田所有者の市川博之さんが、畔道に天日干しをするための杭の準備をしてくれました。

太い杭を中心に1本、それに交差するよう細い棒を2本土にグイッと差し込みます。(右上)

こうすることで、稲の束をひっかけても落ちないようになっているんですね。

   

今回、棚田オーナー事業で借りている田んぼがあのようにぬかるんでしまったため、

急きょ、市川さん所有の別の田んぼで稲刈りを体験させてもらいました。

かつては8軒ほどの家族が暮らした横倉地区でしたが、時代とともに人々が移住し、
今ここでお米を作っているのは市川さんのお宅だけになりました。

見渡す限り広がる田んぼが、市川さんの育てたお米なのです。

   

今回のオーナー事業には、全国各地から29人がオーナーとして登録しました。

全ての方が田植えから稲刈りまでの体験に参加できたわけではありませんでしたが、

それでも、これほど多くの方々が棚田の景観維持のために賛同してお金を払い、

農作業に協力してくれたことはとても嬉しいことだと思いました。

この小さな彼女もオーナーのひとりです。

   

左の男性は、能代市の建設会社社員で、社会活動に参加しようという社内方針から、

社員3人でオーナーに登録しました。「初めて参加したが、自然に触れられて楽しかった」、

「久しぶりの農作業で楽しかった」とそれぞれ感想を話していました。

 
   

一方で、オーナーに登録した人以外にも、農作業体験をしたい、自然体験をしたいという

たくさんの人たちが毎回参加してくれ、イベントを大いに盛り上げてくれました。

この団体は、世界的な環境保護活動をしているNGO「FoE Japan」のメンバーで、

連休を利用した3日間の日程で藤里町に滞在しているということでした。

   

秋田市から参加した女性(左中央)は、

「子供に体験をさせたくて」と小学生の息子と一緒に汗を流しました。

その男の子も、時間とともに稲刈りの腕を上げて、最後には「楽しかったです」とひとこと。

母親は、「子供のために参加したけど、結局自分が楽しんでしまいました。

秋田の方言を聞けたのも良かったです」と、親子で充実した時間を過ごしてくれたようです。

また、善吉さんから束ね方を教わっているこの女性(右)は、

「藤里町が大好きだから」という夫と共に秋田市からお越しで、

来るたびにその魅力に引き込まれ、おいしい食材を購入しては味わっているそうです。

   


夏のツアーで出会い、仲良しに!


親子3人でオーナーに登録してくれました

最近は、農家の子供でさえも田植えや稲刈りなどの農作業から離れているのだそうです。

子どもたちの中に、この一日が楽しかった思い出のひとつとして残ってくれたら嬉しいです。

   

堂々と掲げられた『横倉「棚田オーナー」田』の看板の横に並ぶあきたこまちの稲。

乾燥、精米をして、11月中旬頃にはオーナーたちの手にお米が届くことになっています。

 
 
昼食
 
昼食は、棚田を臨む高台にブルーシートを広げてみんなで食べました。
 
 

時間に合わせて、白神ぶなっこ教室のお母さんたちが昼食を現地まで車で配達。

包みには、おにぎりと卵焼き、ミズ(山菜)の実の塩漬けとワラビの煮物が入っています。

さらに温かい具だくさんの豚汁まであって、稲刈りで疲れた身体に沁み渡りました。

 
   

特に、豚汁は大鍋が4つも運ばれてきたにも関わらず、おかわりを繰り返してほぼ完食!

朝からひとつひとつ手間をかけて作ってくれたお母さんたちに感謝しながら

みんなで美味しくいただきました。ごちそうさまでした(^^)

   

昼食の後、棚田所有者の市川博之さんからごあいさつがありました。

「今日はわざわざ藤里町のはじっこまでおいでくださいまして、ありがとうございました。

本当は今年で辞めようと思っていたんだけど、こうしてみなさんが来てくれたからできました。

こうしたみなさんとの出会いがあったのも、ぶなっこ教室の佐尾さん夫婦のおかげです。

どうもありがとう。ぜひまたお越しください。」

今年87歳になるという市川さん。

秋田市に暮らす息子さんが毎週のように通って来てくれるとはいうものの、

ご自身の中でも、いつまで農業ができるのか、という自問自答があったに違いありません。

棚田オーナー企画が、市川さんの米作りに少しでも役立てたことがあったとすれば、

それは、わたしたちにとっても、収穫の喜び以上のものがあると思いました。

   
横倉・水無地区の散策

午後からは、横倉地区と水無地区の散策に出発。往復およそ2kmの山道を歩きます。

今回の棚田オーナーのもうひとつの魅力が、この米作り以外の体験プログラムです。

「白神ぶなっこ教室」は、この白神産地の自然体験をメインにした体験プログラムが人気で、

横倉・水無地区の散策も季節を問わず楽しめます。冬はかんじきを履いて歩くんですよ。

   

白神山地の湧水

すぐそばに生えるブナの林

途中にある湧水は、町の第三セクターが運営生産するミネラルウォーター「白神山水」
水源から分かれています。ブナが蓄えた水が、冬場も凍らずに豊富に流れ落ちています。

白神ぶなっこ教室の佐尾さんは、「こんなに身近にブナの木が生えている。

こんなところなかなかないわよ」と、この地域の魅力を話してくれました。

   

横倉地区からテクテク歩くことおよそ1km。水無地区の「水無沼」へ到着します。

かつては湖岸の反対側に民家があったということですが、ずいぶん前に無人になりました。

途中、参加者の女の子が夢中になったフキの「傘」と「うちわ」。

わたしもちいさな葉っぱの「うちわ」をいただきました。

   
午後3時。心地よい疲労感を残しつつ、山を下りました。
 

みそづくり

横倉地区を後にしたわたしたちが向かった先は、協議会会員「白神の恵体験工房」です。

藤里町内で栽培された大豆を使ったみそづくりを体験し、おみやげにしました。 

 
   
大豆、塩、麹などを混ぜ合わせます。
   

 小さなハンドルを一生懸命回す

お母さんとの息もぴったり!

 

潰れた大豆を小さなみそ団子にして、

プラスティック容器に詰めていきます

「機械使わなくてもいいかもなぁ」と

思案中です

混ぜた大豆は機械ですりつぶしていきます。小さな機械なので時間と根気が必要でしたが、

秋田市から参加の親子(左)は、息の合った絶妙なチームワークでスルスルと完成!

「さすがだね」と周囲から絶賛の声を浴びていました。

中には、機械の待ち時間の間に、大豆をほとんど手で潰してしまう人も。

「これでもいいかな。でも麹が残るかな」と奥さまと相談の末、結局機械にかけることに。

「味噌屋出身の妻は懐かしかったみたい」と仲良く作業をなさっていました。

 

首都圏から参加した団体のみなさん

「麹が入ってるから手がスベスベになるかも」

 

 

白神の恵体験工房」では、ひとり1200円でいつでも体験を受け入れています。

みそのほか、豆腐づくり(ひとり1500円)もありますよ。要予約、定員:大人20人程度

ご希望の方は代表の淡路さんまでご連絡ください。電話0185-79-1540

   
アユの簗(やな)漁の見学

白神ぶなっこ教室への帰り道、藤琴川で行われているアユの簗(やな)漁を見学しました。

 

先月から始まったというこの漁は、主に、産卵のために川を下るアユを採るための仕掛。

すのこ状の巨大な仕掛は、上流部を水中に沈め、下流部を水上に出して、(右)

泳いできた魚が仕掛の上に乗ったところを捕まえるそうです。

   

仕掛にはアユのほか、カニも捕まるということで、河川敷に置かれたたらいの中には

たくさんのカニが入っていました。漁は今月いっぱい行われるということです。

   
   
 
 
 
 

「本当は今年で辞めようと思っていたんです」と話す市川さんの複雑な表情が印象的でした。

誰もが思わず「いいところだね」とつぶやくこの景色は、市川さんの家族が代々大切に

守ってきたからこそある貴重な宝。87歳になる市川さんが早々に辞めてしまっていたら、

わたしたちのこの出会いさえもなかったのかもしれません。

手を放してしまえば簡単に消え去ってしまうこの里山が、記憶としてだけでなく、

手で触れられる身近なものとして存在し続けられるよう維持する責務が、

恩恵を受けるわたしたち一人ひとりにもあるのだと感じました。

 

県北担当やっつ

   

✾「白神ぶなっこ教室」佐尾さんからメッセージが届きました✾

倉の棚田オーナーとツアーにご参加下さった皆様、

ありがとうございました。
新緑の中での田植え、夏の草刈りと川遊び、
蛍と星空の素晴らしかったナイトハイク、
元気にはねる小さな生き物たち、
黄金色の棚田での稲刈りと小岳登山・・・、
それぞれの季節の自然とお米作りを楽しんで
いただけましたでしょうか。
きれいな水と空気で育まれる横倉のお米、
私たちの食生活に欠かすことのできないお米が
どのようにして作られるのか、
その一端にでも触れていただけたのなら、
うれしいことです。
この美しい棚田の風景が、
過疎化・高齢化により失われてゆくのは、
残念なことです。
でも、この棚田を守ってゆくのは
並大抵のことではありません。
このオーナーツアーをきっかけに、
皆で知恵と力を出し合って、
日本の原風景ともいえる棚田のお米を
守ってゆければと思います。
どうかまたお出で下さい。
これからもよろしくお願いいたします。
白神ぶなっこ教室 佐尾和子
 

これまでの様子

はる!新緑の棚田で田植えツアー

なつ!ブナと水と蛍の里で棚田ツアー