2011
秋田県中山間ふるさと水と土現地見学会
in鹿角

2011年9月3日(土)

9月上旬、鹿角市を舞台に、第8回目となる秋田県中山間ふるさと水と土現地見学会(主催:県農山村振興課)が開催されました。これは、秋田県の中山間地域等の農業・農村が有する自然・景観、伝統文化・芸能、郷土食などの地域資源の魅力について、広く県民に関心を持ってもらい、農地や土地改良施設などの保全・利活用に関わる地域住民活動への参加を促進することを目的に、毎年開催されています。

 

参加者約50名の多くは秋田市在住の皆さんでした。同じ県内でありながら、なかなか足を運べない鹿角の農山村で何を感じ取ったのでしょう。盛りだくさんな一日の様子をお届けします。

 
花輪の市日

最初の目的地は、鹿角市花輪の市日(いちび)。市日とは、朝市のことを言います。 かつての造り酒屋である旧関善酒店の前で、NPO関善賑わい屋敷代表の田中幸徳さん(写真左・右)が説明をしてくれました。昔は町通りに面した建物の庇(ひさし)をアーケード風(この地域ではこもせと呼ぶ)に利用し、雪や雨の日も市日の出店ができたそうです。
昭和59年、関前酒店から通りを挟んだ向かいに市日の開催場所が移され、400年に渡る歴史が今もなお刻み続けられています。昔の名残を引き継いだ「こもせ風」になっており、毎月3と8の付く日に開催。野菜や山菜はもちろん、八戸や男鹿の海産物、鍛冶屋や呉服屋が出店することも。会話を楽しみ、新鮮な食材を求めて参加者の皆さんと一緒に一周しました。
 
花輪大堰

次は花輪大堰頭首工の見学をしました。花輪大堰は、鹿角市花輪を縦貫する幹線用水路で、灌漑はもちろん、風趣、防災、衛生において大きな役割を担っています。現在の頭首工は、県営事業により改修されたことによって、用水の安定供給、また洪水被害の防止にも役立っているそうです。

このような施設をじっくり見る機会をいただき、恐る恐る水の流れを真上から覗き込む皆さん。その迫力に尻込み…。普段は見過ごしてしまいがちな施設ですが、「生活に密着しているもの」と改めて気付かされました。
 
お昼ごはん~あんとらあ*道の駅かづの~
道の駅かづのにて、お昼ごはんです。鹿角・大里集落の大日堂そばや、鹿角産のお米・淡雪こまち、かづの牛使用のコロッケなどなど、地産地消にこだわったお弁当はボリューム満天!

昼食後は、本協議会会員であるあんとらあ直売所(道の駅かづの内)でお買い物も楽しみました。ちょうど鹿角の名産「北限のもも」の季節。主流である川中島という品種は収穫前でしたが、違う品種の桃も店内では人気。また、野菜の袋詰め放題に、参加者の皆さんも夢中です(^^)

 
花輪ばやし

そして、同じく道の駅かづのにて、花輪ばやしの実演を見せて頂きました。毎年8月19・20日に開催される花輪ばやしは、日本三大ばやしのひとつとされています。豪華絢爛な屋台、熱いお囃子は見る者の興味を惹きつけて離しません。
この日は、参加町10町の中から舟場元町がご協力くださり、本囃子、霧囃子、吉原格子、テンポを変えた本囃子の4曲を披露してくれました。 10台の屋台が年に一度の出番を、道の駅かづの内・祭り展示館で控えています(有料で見学可)。当日の祭りの賑わいが聞こえてきそう。
バス1号車の皆さん
  
2号車の皆さん
見事な実演を披露して下さった皆さん、ありがとうございました!
渡部家「史料館」
鹿角市の石鳥谷集落にあり、119年の歴史を誇る古民家・渡部家を訪れました。内部は修復されていますが、骨董品なども数多く一般公開しています(要予約)。南部藩と佐竹藩の領地争いを示すという大きな絵図面の前で、管理者である前嶋さんが説明して下さりました。家屋に使用されている木材へのこだわり、数えきれない古民具の数々に、参加者からは驚き、懐かしむ声が聞こえてきました。
渡部家には3つ玄関があります。左の入り口から入る方は渡部家より身分の高い方。右は同格かそれ以下。もう一つの玄関は、当時更に低い身分の方が使ったそうです。皆さん、その説明を後から聞いてにんまり、もしくは苦笑い。 300年前の古文書に見入る皆さん。その数は3000点にも及ぶそうです。「子どもたちに建築や歴史を勉強してほしい」と、史料館を開館したこともあり、展示されている古文書には現代語訳が書かれていました。
 
水沢集落の棚田
最後に訪れた集落は、同市内でも標高が最も高い水沢集落です。この土地を守りたい若手農家を育成したい、という意識から水沢集落農地保全管理組合が発足。住民全員が力を合わせ、地域の保全活動に取り組んでいるそうです。組合長の畠山さんがお話をしてくれました。道中、バスの車窓から見たこちらのお花畑は、地元の老人クラブの皆さんが毎年手作りしているそう。
バス1号車の皆さん
2号車の皆さん

不利な環境で農業を営む大変さをお聞きしましたが、その中でも集落全戸の団結力が強いことが伝わってきました。こちらの美しく整備された棚田をご覧ください。組合の活動は、協調性や生産意欲の向上などプラスの効果をたくさん生んでいるそうです。

 
水沢盆踊り

引き続き、水沢集落会館前の広場で水沢盆踊りの実演を観賞。安比地域から入ってきた踊りがここに根付いたのではないかと考えられる盆踊りで、重く大きな太鼓を持ちながら踊るのは、こちらの盆踊りのみといわれているそうです。
  
小学生から大人までが5曲を息ピッタリに披露して下さいました。先ほどのお話に続き、この集落の一体感を実際に目の当たりにした時間でもありました。今回の現地見学会では、たくさんの参加者がこの集落に興味・関心を抱いたそうです。
 
お土産 ~大館市・陽気な母さんの店~
現地見学会も水沢集落を後にし、秋田市を目指し走り出しました。帰り道である大館市・陽気な母さんの店(協議会会員)へ。
こちらの地域も梨や桃など果物が豊富に揃っていました。長い列を成し、この旅のお土産を手にする皆さん。
 

現地見学会を終え、参加した皆さんの感想をいくつかご紹介します。

大人から子供まで男も女も一緒になって集落の盆踊りを楽しんでおられるのがわかって、大変好感を持った。


農山村地域の取り組みに目からウロコでした。一生懸命さが伝わりジーンときました。応援したいという心でいっぱいです。


平地での農業しか見たことがなかったので、中山間地の土地利用に、なるほどと思った。人間が生きていくためには食の大切さをみんな感じていると思う。工業と経済だけでなく、秋田と農業、秋田と林業と将来の展望をもてる社会にしていけたらと思う。


水沢の皆さん、ありがとう。ここで農山村地域活動への考えが一変。町内(集落)がこぞって地域を守り、つくっていこうとする努力、活動に感激すら覚えた。水沢地区のこのようなところで孫を育ててみたいと思った。


見学会に参加して自分の住んでいる秋田県のことをよく知ることができ、良さ、又は問題を感じ取ることができた。自分の住んでいるところをよりよくしていくため、考えたり一緒に力を合わせ地域の活性化を自分のこととして考えるために、また、これからの世代に夢と希望を与えるためにも、私達が見て感じて考え行動するために、このような企画をぜひ継続してほしい。

2011 秋田県中山間ふるさと水と土現地見学会in鹿角

▼現地見学会のダイジェスト!花輪ばやしや水沢盆踊りなど臨場感たっぷりにお伝えします。

作成:県 農山村振興課

今回、私たちが見た伝統芸能や歴史的建造物、その地域の特産など、全てが目を見張るものばかりでしたが、何よりもの魅力はそこで出会った人たち。


その皆さんに共通しているのは、それぞれが住む地域への想い・誇りを大切にしている点のように感じました。そしてそのような想いが、現地見学会の参加者にしっかりと伝わり、たくさんの感動を生んだように思います。

 

秋田がこれまでに育んできた自然・文化の素晴らしさ。
その価値への気付きを現地の人が再確認し、参加者が新発見できた一日に感謝!

 

 

現地特派員 けこさん