東由利の魅力

 男鹿半島から秋田市雄和、そして国道107号を経由して東由利に入ったのは午後3時を過ぎていた。どこも似たり寄ったりの国道沿いを外れ、「弁天の宿」が建つ町中に入ると、趣が急に変わった。「正しい雪国」だった。土台の高い家が建ち並ぶ。樹々は何枚もの板で囲われ雪から守られている。暮らしがどっしりと落ち着いている気がした。

「弁天の宿」は、弁天様を祭る池の向かいに静かにたたずんでいる。高橋さんが説明してくれる。「ここは高台にある、田んぼや畑が広がる平地なの。台風もめったに通過しない。いいとこよ」

 翌朝。高橋さんはモズクガニの味噌汁に舌鼓を打っている私たちをせかした。「岩館のイチョウを見に行こう」。推定樹齢300年、樹高30㍍、枝張り30㍍、幹回り9.2㍍―という秋田県指定の天然記念物。訪れたときは枯葉が舞い積もり、黄色のふかふかじゅうたん状態。見上げた裸木は、低く立ちこめた灰色の雲をバックに、数10本もの枝をくねりながら広げていた。

「ここだけじゃないのよ。法内の八本杉、八塩山、八塩いこいの森、水がポコポコと湧き出ているボツメキ水源地…。いいとこいっぱいあるの」

「東由利のいいとこはね、景色以外もあるの。大曲、羽後町、横手市どこでも3,40分で行ける。分かる? 全国花火大会、盆踊り、かまくら。ねっ、有名な行事にすぐ行ける」

 しみじみと嬉しかった。「来たかったら、またいつでもいらっしゃい」。そう言葉をかけてもらえた気がした。

きょうの料理

夕食
夕食
朝食
   
一品:こってりと濃厚な川ガニの味噌汁(左)。その後ですっきりとした甘みの牛乳カンテンと煮豆。いい組み合わせでした。
川ガニの味噌汁 牛乳カンテンと煮豆