果樹の生命力に願いを託して

~農家民宿「自然満喫家」~(2011年7~8月由利本荘市矢島町)

果樹への願い-茂木栄一さん

◆桃の葉かき、ぶどうの袋かけ

 久しぶりに澄み切った青空にカラッとした気候が気持ちいい7月25日(月)、農家民宿「自然満喫家」のオーナー・茂木栄一さんが経営・管理する「茂木農園」で、作業の様子を見学させていただきました。

 矢島周辺で果樹園を大きく手掛けているのは、実は茂木さんのところだけ。化学肥料には頼らず、牛堆肥・魚粉・カニガラ・カキガラ・骨粉・鶏糞など、有機肥料を中心に大切に育てられています。

茂木栄一さん

桃の葉かき

 広大な果樹園を茂木さんの案内でまわり、説明を受けました。

 「(果樹園の)下には、全部暗渠を敷き、水はけを良くしている。まんべんなく陽が実に当たるよう、その上に反射板を敷きます」

 「下に反射板を設置しても(日の出から日の入りまで)、どうしても陽が当たらない実がある。出荷する際色合いがまばらだと良くないから、葉かきは非常に大切な作業。念入りに行います」

 確かに、桃を買う時は赤くなったおしりの部分を見て判断しますね。

桃を見上げる

桃の木

 「今年は豪雪にやられて、実の付きがあまり良くない。毎年、桃の木のオーナーを募っているが、今年はどうかな。希望者がいればやるけれども」と、心配そうに桃の木を見上げる茂木さんでしたが、「最近は天気続きだから、このぶんだとすぐ色づく。来週の収穫は、予定どおりだな」と、確信したご様子。

◆待ちに待った桃の収穫

桃の収穫をする茂木栄一さん
桃を入れる
 8月11日(木)、今シーズンの主力商品である『白鳳』や『あかつき』の収穫が始まりました。
 他にも「なつき・大久保・川中島・おどろき」など、沢山の品種があります(「おどろき」は、日数が経っても柔らかくならず、カリカリとした固い実が人気です!)。
 簡単そうに見えて、実は桃の収穫ほど難しいものはないです。コツは、実を強く持たず(握るとつぶれてしまいます)、掌を大きく広げ、やんわりと全体をまあるく包みながら、回さず(引っ張られて皮が剥けてしまいます)、垂直に一気に「もぎ取る」のだそう。慎重にもぎ取ったあとは、やはり潰れてしまわないよう、箱に一段だけ収納します。他の果実のように、カゴに積んだりはできないのです。

午前に収穫した桃

茂木果樹園の桃

 「桃の等級は色々あるんだけど、うちは独自に(100~120g/121~135g/136~170g/171~220g/221~270g/271~310g/311~の)7種の規格を作っているよ。」基本、15個入りの箱を一度に30箱軽トラに積んで、約6往復するので、1日に2500個以上は収穫されている計算です。

桃の選別をする栄一さん

子吉川

 桃の選別をする栄一さん。作業場は、108号線にほぼ並行して流れている子吉川に沿って、坂の下の旧道に面しています。裏の戸も開放していたので、爽やかな風が吹きわたりました。「ここも、農業体験に来た人や民宿に来た人々に、何らかの形で利用してもらえればいいんだろうな。今は、(桃の収穫で)忙しくって追いつかないけども」と言う栄一さんなのでした。

茂木果樹園の桃 
茂木果樹園の桃
 「今年は一週間ほど実の付きが遅れ、お盆にもずれてしまったため、お中元商品としての出荷が厳しい。さらにお盆にかぶってしまうと人も頼めず、家族だけでの収穫作業となるから大変だ」と、栄一さん。「今年は、なげる(捨てる)実があるな…」と、厳しい表情を浮かべます。
 でも、「何とか、家族だけででも頑張ってやるしかない。今年の夏は、暇がないよ」と、その眼差しは真っ直ぐ可愛い我が子(桃の木)へと向けられていました。
茂木果樹園の桃
茂木果樹園直売所
 よどぎみが取材中にも、近所のお客さんが買いに来ていました。「茂木さんのお宅の桃は、ほんとうに甘くて香りが良い!」と評判でしたよ♪昼と夜の温度差の多い場所で栽培された桃だから、美味しいのです。
 20種類以上ある桃の収穫は今月いっぱい収穫、民宿裏の直売所(108号線沿いガレージ)で販売中!他に矢島町農林水産物直売所「やさい王国」でも購入することができます。

ぶどうの袋がけ

 ぶどうの袋掛け。こちらも念入りに行います。大切に育てられた果物だけが、消費者の口に入ります。

茂木さん

 「地面に近い枝は、雪で引っ張られて折れたりしたもんだから、やむなく切ったんだよ」

ラ・フランス

 子吉川にほど近いラ・フランスの木は、座高があるため、枝が引っ張られる雪害は免れました。

ゴールデンキウイ

 ゴールデンキウイ。

 今年は雪深い冬だったことに加え、大雨による土砂災害も。今年は例年どおりの大豊作とまではいかなかったようです。常に自然との闘いだけれども、自然の恵みをいただいていることは確か。茂木さんはあきらめず、自分の田畑・果樹園のみならず、地域で農業を辞めてしまった方の土地まで、「誰かが手入れしないと、水もあがってこないし、そこの地は痩せてしまうから」と、代わりに請け負ったりもしています。

 「鳥海山国際禅堂」の入り口に掲げられていた「驀直閑歩(まくじきかんぽ)」という言葉のように、地道な努力があってこその自然との共存。そこには、果樹の生命力に願いを託し、ひたむきに努力を続ける農家さんの姿がありました。

県央地区現地特派員 よどぎみ

✿ 矢 島 町 の 豊 か な 風 景 ✿

子吉川 おとり鮎漁場
 清涼な水が流れる子吉川は、良質の「おとり鮎漁場」として知られています。国道108号線沿いには、このような漁場があり、釣り人を楽しませています(必ず、遊漁券をお買い求めの上、ご利用ください。詳しくはコチラ→子吉川水系漁業協同組合)。
土田家住宅 土田家住宅内部
 昔の農家の暮らしを垣間見ることのできる土田家住宅(国指定重要文化財)は、すぐ傍です。

鳥海山国際禅堂

鳥海山国際禅堂内部

 茂木さんの果樹園を子吉川を挟んで、向かい側の高台にある「鳥海山国際禅堂」を案内していただきました(「高建寺」が創建毎週木曜日17:30~19:00、定例坐禅会を行い、国籍や僧俗を問わず参禅希望者に門戸を開放しています。子どもたちの合宿や、団体などでの使用も可能だそう。

オニヤンマ

  偶然見つけた、オニヤンマ。巨大でした。

矢島の田圃

  鳥海の水稲も、順調に育っています。

 茂木果樹園にて

【農家民宿「自然満喫家】

 由利本荘市矢島町坂之下字御嶽の下29-1

(TEL 0184-55-3351)
料金 1泊2食付き:6,000円
   1泊朝食付き:4,000円
   1泊素泊まり:3,000円
※お風呂は利用できません。鳥海荘、寿康苑等近隣の入浴施設へ送迎致します(入浴料は上記宿泊料に含まれておりますので、ご安心ください)。歯ブラシ等の洗面用具、パジャマはご持参いただくようお願いします。完全予約制。
 
収容人数 客室数2部屋(母屋)、1日1組限定(5名様まで)となっております。
 
駐車スペース
 
農作業体験 ご宿泊された方は、農作業体験を無料ですることができます(収穫物・材料費などは要相談)。
 
 ★団体受け入れなどに対応致します。
  お気軽にお問い合わせください。