2010 秋田中山間

ふるさと水と土現地見学会in男鹿

2010年9月4日、男鹿市で、
「2010
秋田県中山間ふるさと水と土現地見学会in男鹿」が開かれました。
これは、
2004年から県農山村振興課が中心となって毎年開いているもので、
県民を対象にしたモニターツアーです。今回で7回目を迎えました。
県内の中山間地域を訪れ、農業・農村がもつ自然・景観、伝統文化・芸能、郷土食などの
地域資源の魅力に触れることで、広く関心を持ってもらい、
さらに農地や土地改良施設などの
保全・利活用にかかわる地域住民活動への
参加を促進することを目的に開催されています。

   
南部排水機場(大潟村)
   

はじめに訪れたのは、大潟村にある南部排水機場。
ここは、およそ半世紀前に干拓され誕生した大潟村の巨大な排水施設(南部と北部)。
大潟村の土地は、周囲を囲む八郎湖の残存湖の水位よりも低いところに位置しています。
そのため、家庭排水や農業排水を自力で外へ流し出すことが難しいのです。
この施設は、そうした村内で排水された水を巨大なポンプで吸い上げ、
調整池へ送り出す働きをしています。
この施設がないと大潟村は水が溜まり水没してしまうんですね。
年中無休のフル稼働です。

   
滝の頭湧水と円形分水工
 

 大潟村から車で15分くらい。

男鹿市寒風山の麓の「滝の頭(たきのがしら)湧水」へ到着です。
くせが無く軽い舌触りの名水を求め、この日も多くの人が水を汲みに来ていました。

   

 

▲円形分水工

 

 

◀滝の頭湧水

寒風山から流れ出るこの滝の頭湧水は、
男鹿市内民の飲料水や農業用水として使われている、大切な湧き水。
昭和30年代に設置されたというこの円形分水工は、水を男鹿市五里合地区や
旧若美町渡部地区などの周辺集落へ均等に分水する役割をしています。
男鹿市五里合(いりあい) 中石(ちゅういし)梨畑
男鹿市五里合(いりあい)中石(ちゅういし)は、県内随一の和梨生産地。
JA秋田みなみ果樹部会 部会長 鈴木作雄さんの果樹園でひと休みです。
「おいしい梨の見分け方は?」という質問に
鈴木さん(左)は、
「産地で見分ければ間違いありません。
男鹿と書いていたら間違いなくおいしい梨です。」
とのセールストーク。さすがです。
   
畑では、果樹農家の女性たちでつくる梨(リ)フレッシュレディー'sの試食・即売会も。
今回は収穫時期よりも早いということで、今年産の梨を味わうことはできませんでしたが、
お母さんたちが作った梨の缶詰の試食があり、みなさん購入していました。
JA秋田みなみでは、毎年10月に「男鹿梨まつり」を開催しています。
梨の即売会、試食会など梨づくしの一日です。
   
旧五里合中学校とすげ笠作り

昼食は、廃校になった旧五里合中学校の体育館でいただきました。

なまはげ直売所のお母さんたちが、男鹿の郷土料理「あんぷらもち」をふるまいます。
なまはげ直売所は、男鹿市なまはげロード沿い(男鹿水族館GAOに行く途中)にありますよ。

   

あんぷらとは男鹿の言葉でジャガイモのことです。すりおろしたジャガイモをさらしで絞り、

絞りかすと絞り汁に、沈殿したでんぷんとを合わせて練り上げています。
まるで大きな白玉だんごのようです。
お米の代用だったジャガイモを、飽きなく食べ続けるための先人の知恵ですね。

   
  

食事のあとは、五里合琴川地区の琴川すげ笠づくり伝承同好会(三浦猪吉会長)による
伝統技術の披露です。
近年、若者の力によって再び脚光を浴びている琴川のすげ笠作り。
笠の表面に縫われるキレイなすげの選別をしていたおばあさんは、
「だがら、じぶんがたも、まげでらんねんだ。」と言って笑っていました。

   
八望台(男鹿市北浦)

平成19年、男鹿市北浦(きたうら)にある一の目潟が国の天然記念物に指定されました。
マールと呼ばれる特殊な地形をもつ火山湖で、
一の目潟のほか、二の目潟(写真手前の湖)と三の目潟があります。
旧五里合中学校から車で15分くらい。八望台からは3つの湖と戸賀湾が一望できます。
前日の台風で天気が心配されたこの日でしたが、適度に風の吹くまさしく絶好の行楽日和。
八望台からの絶景に参加者の女性は、

「いろいろ旅をしたけど、こんなに素晴らしい景色は見たことない!」と興奮気味。
たしかに、いつまでもそこで景色を眺めていたい、そんな時間でした

   
なまはげ大橋から臨む安全寺集落の棚田

見学会はまだまだ続きます。次は名物なまはげ大橋から観た北浦安全寺の棚田です。

   

安全寺集落など北浦地域の歴史に詳しい安田善太郎さんは、
「むかし、船が故障でもない天気のせいでもないのに動かなくなったことがあった。
それで、山にある神社を見に行ったら祠が壊れて御神体が雨ざらしになってた。
これは、山から里に神様が下りたいってことなんだべな、って村人は里に下ろしたわけ。」

安田さんの話からは、安全寺の人たちがいかに海や山、神様を大切にしてきたのか、
その優しさと強さを感じることができました。

また、菅江真澄など男鹿の歴史に詳しい山本次夫さんのお話も。
「みなさん!ここには海がある、山がある、田んぼがある!!

これをどうにかして活かしていかなくては!」

山本さんの熱の入ったお話に参加者もうんうんと大きくうなずいてました。

   
大龍寺とコントラバス演奏会

見学会の最後は、男鹿市船川(ふながわ)大龍寺でコントラバスの演奏を聴きます。
大龍寺は、船川の高台に建つ大変立派な寺で、

「秋田にこんなお寺があるなんて」とみなさん驚いていたようです。

   

 

日が陰り、少し秋の気配を感じる夕方。ツアーの締めくくりはコントラバスの演奏会です。
奏者は、地元五里合琴川で喫茶店「こおひい工房 珈音」(協議会会員)を経営しながら、
さきほどのすげ笠の復活や伝承に力を注ぐ佐藤毅さん

学生時代から続けているチェロは、各地で演奏会も開いています。

   

昨年横手市平鹿で行われた現地見学会で参加した旧大森町塚須沢集落は、
今年春から棚田のオーナー制度をはじめました(
その様子はこちらから)。
この現地見学会で多くの県内の人の目に自分たちの活動が触れることで、
価値を再認識し活力を養った結果かもしれません。
今回も地域のために活躍するたくさんの人に出会いました。
ここから何かが始まれば。そして参加者の方々が男鹿の応援団になってくれたら!
そんな期待を持った一日でした。

県北担当やっつ