

畑でとれた枝豆、漬物、梅干、干し柿、
おやきなど手作りのものが並ぶ。
13:30 秋田空港よりレンタカーで大仙市へ。見渡す限りの田園風景の中、県道13号線沿いに「季節の郷」の大きな看板。 その傍らにまだ新しい古民家風の家が一軒。ほっとして声をかけたものの応答がなく、ドアも閉まっています。 どうやら無人のようです。途方に暮れていると隣の建物に軽トラックが止まり、年配の男性が降りてきました。 救われた思いで「季節の郷はお留守でしょうか」と尋ねたところ、「これは娘の家だ。娘は午後から盛岡に行ったよ」との答え。 びっくり仰天!確か予約は11日のはずだったのに、出直しもできないしどうしよう・・・。 そうこうするうちに古谷さんと電話がつながり、12日の予約だと思っていたとのこと。 行き違いが生じてしまったようです。盛岡の研修会に出ていて、帰宅は20時~21時頃とのことなので、 宿泊のみお願いして教えていただいた近くの見所、農業科学館へお父様の案内で出かけました。 ここでは、農業の歴史や昔の農民の生活用具、農機具などが展示されており、興味深いものでした。 夕食を済ませて19時頃、明りのついた「季節の郷」に帰着。 にこやかに出迎えてくださったすてきなご夫婦に戸惑っていると、古谷さんの叔父様ご夫婦とのこと。 大きな木のテーブルのあるゆったりとした食堂でおいしいコーヒーと自家製の漬け物、おやきなどをいただきながら、 お話をしていると、古谷さんが帰宅。しっかり者のちょっと若いおかあさんという印象。 あとでわかったのですが、農水省の「おかあさん百選」のお1人とのこと。納得。
翌朝は、まず自宅でお父様手作りのいぶり大根漬けを見せていただきました。 仕事場には、脱穀機、乾燥機など昔お米屋さんで見たような大型機械があって、お米作りも設備投資が大変だとの印象。

初めてリース作りに挑戦
10時、公民館には続々と30人ほどの親子連れがやってきて、リース教室が始まりました。 色とりどりのドライフラワーなど材料のほとんどは古谷さんの手作りです。 1時間半ほどで各自思い思いのすてきなリースができ上がり、記念写真を撮って帰って行きましたが、古谷さんの気分はさえません。 親御さんたちに失望したとのこと。なぜなら古谷さんと私、公民館の人が一生懸命後片付けをしているのに、 誰1人手伝う人もなく、ほとんどの人が、「ありがとう」もなく帰って行きました。 こうした思いは、農業体験の子どもたちを受け入れた時もあるそうです。 今まで古谷さんは、子供たちの作ったお米をわざわざ学校まで届けに行っていました。 でも遠路はるばる行っても先生からのねぎらいの言葉もなく帰ってくることもあり、 もう届けるのはやめようかとも悩みました。 採れたてのものを食べる意味を先生がわかっていないと感じるとのこと。
農業体験とは、ただ農村の生活を体験するだけではないはずです。 その中で異なる地域の人々や文化と交わり、自分たちの命をつなぐ食べ物が、どのように育ち、 収穫されるのかを知ること、そして食べ物やそれを作る人々への感謝の気持ちを育むことも重要な要素であるはずです。 こうしたことを大人たち、親も先生も教えることができなくなっているとしたら、何と寂しいことでしょうか。
季節の郷に帰って来ると、ハタハタづくしのおいしい昼食がまっていました。 子供たちや宿泊客受け入れの時は、叔父様夫婦もスタッフとして料理など諸々を担当しているとのこと。 このハタハタは、わざわざ八森まで行って水揚げされたばかりのものを入手してきたそうで、 卵いっぱいのハタハタの味噌仕立てに入っていた自家製ねぎは、柔らかく格別の味でした。
民宿の窓からは目の前に広々と田んぼや畑が続き、遠くに角間川の河畔林が見えます。 お天気が良ければ鳥海山が望まれるとのこと。春には一面の菜の花に囲まれることでしょう。 四季折々の季節の郷の風景を見てみたいものだと思いました。
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| リース作り教室 | ハタハタづくしの昼食。畑で採れた黒豆、手作り豆腐も。 |
1999年、秋田花まるっグリーンツーリズム協議会の研修会に参加して、ゼロからのスタートでした。 2000年に、民宿はまだ建てていなかったので、まず農業体験だけを受け入れました。子供の頃から鳥海山と田んぼの季節の移り変わりが好きだった、そんな思いがずっと心にかかっていて、畑にできているスイカをみて喜ぶ地元の子供たちの姿に、畑を見せてあげたいと思っていました。専業農家で、お米の他に、5月~11月はじめに週1回開かれる朝市に、とうもろこし、スイカいぶりがっこ、ブロッコリーなどを出しています。地域に子供たちが少なくなっているで、子供たちの声が聞こえればよいとの思いからでした。この年、ヨーロッパのグリーンツーリズムの視察研修に行き、変えるときには「やりたい」という気持ちは固まっていて、この民宿を建てました。当時中学1年だった息子は借金さえ残さなければよいと了解してくれました。その息子も今は大学生で、食品関係を専門とし、同じような道を歩んでくれそうです。
2005年、県の規制緩和で自宅も農家民宿の許可をとり、今では25軒の農家で約200人の子供たちを受け入れ、そのとりまとめをしています。冠婚葬祭や病人などで都合の悪くなる家もあるから、登録農家の軒数には余裕をもたせています。修学旅行の受け入れは、行政にたよらず、こつこつと広げてきました。受け入れのための組織、あぐり耕房も設立しました。受け入れ校は、旅行会社より依頼されています。子供たちには、農業体験以外にも外で思いっきり遊んでもらっています。今の子供たちにこうした機会は少ないと思うから。食べ物は、畑で採れた野菜や漬け物などほとんど自家製のものを出しています。おにぎり作り、スイカの収穫、アスパラもぎなど季節に応じた体験を行っています。
こうした受け入れ体制作りを、農作業の合間に個人でやるのは、並大抵のことではないはずです。1人で25軒もの受け入れ農家を集めた熱意に感動!
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| 農機具を照明に | お部屋の窓から広がる田畑。お天気がよければ鳥海山が見える。 |
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| 古谷さん(左)、叔母の近江さん(右)と筆者。 季節の手作りキルトが温かな玄関ホール。 |
古谷さん(中)と近江さん夫妻 |
今回、日程の行き違いで夕食をいただくことができず残念でしたが、すぐに代わりの方にお願いできる体制ができていて、尚かつアットホームなおもてなしをいただき、本当にうれしく思いました。帰る頃には最初の戸惑いなどすっかり忘れて、また再訪したいと思いました。温かな人柄に触れ、自家製の食材のおいしい食事、季節ごとに変えるタピストリー、リース、わら細工など心和む手作りのインテリアにほっとした時間をもてました。そんな雰囲気の中で、都会に暮らす人々が遠くて近い(根源的な)農業や環境について、肌で感じ考える機会をもてるものが、グリーンツーリズムの旅のよさなのではないでしょうか。